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ずっと、ずっと、この日を夢見ていた。
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「初めまして。蓮見千歳です。最初は分からないことだらけで、ご迷惑をおかけすることもあると思いますが、一日も早く会社に貢献できるよう頑張りますので、ご指導のほどよろしくお願いします」
凛とした声で挨拶を終え、薄く微笑んでみせると、先輩社員たちは予想通りの軽いざわめきと、まばらな拍手で私を迎えた。
私が今日から就職した化粧品会社eternoは、父が代表を務めるLotusの子会社だ。
子会社の社員とはいえ、「蓮見」の名を名乗れば、即、親会社の社長を連想できる程度に、父は会社でも業界でも影響力のある存在だ。
そんな父には内緒で、三次まであったeternoの就職試験を乗り越え、自力で採用に漕ぎ着けたまでは、長年の計画どおり。
だけどー
「椎名晴臣です。よろしくお願いします」
まさか私だけでなく、晴臣までeternoに入社してくるなんて。
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