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Episode2. 偽装交際のスタート
期間限定彼女として3日が経った。私は会社帰りに滝田の家に行き、お風呂を沸かして夜ご飯を作り、洗濯物を干す日々。やっぱり家政婦かと自虐的になるが、一カ月経てばこの生活もなくなるのだ。
私達は条件付きの関係のはず。しかも、人を好きになることはないと言っておきながら、優樹は夜になると、疲れたのか甘えてくる。お互い違和感もなく、いつの間にか体の関係も当然のことのようになっていた。
「おはよう」
優樹が起きてきた。夜中までセリフを覚える練習をしていたので、寝不足のようだ。普段見ないボサボサの頭がなんだか可愛い。やっぱりアイドルって大変なんだな。
「おはよう〜」
朝ごはんは、必ず和食。納豆とご飯とお味噌汁に、半熟の目玉焼き。そして自家焙煎のコーヒーを入れるということで。料理は大学生から一人暮らしはしているから得意な方だったので、ここで役に立って良かった。
「いただきまーす」
二人で手を合わせて、食べる。優樹も、お母さんがいた時はこうして食卓を囲んだんだろうな。
「夜遅かったでしょ?大丈夫?」
「ああ、ちょっと疲れたけど大丈夫」
出会って数日とは思えないほど、私達はお互いに居心地の良さを感じている気がした。
「じゃあ、私先に出かけます」
「あぁ、いってらっしゃい」
「次は月曜日だよね」
「うん、映画館ね」
それは、私が発案したデートのことだ。外のデート気分を味わいたいじゃない。付き合うってこういうものなのか、とてもドキドキする感じ。しかし、どこかでこれが数馬だったら、とつい想像してしまう。
とはいえ、優樹が受け入れてくれた後で気がついたが、職業柄存在がバレてはいけないだろう。面倒なことを提案したようで申し訳ない気持ちにもなっていた。
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