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早朝、皆顔色も悪く口数も少ない。怠そうにロッカーを開け、トレーナーにジャージといったものをはぎ取っていく。
寒い。鳥肌が立つ。
ガサガサ衣擦れの音があちらこちらから聞こえてくる。
ベージュのスリップに、白くごわごわとした素材のものを着る。
綿の割合が多い厚手の生地で、これでもかとかけられたアイロンにより、袖を通すだけでもいちいち音がする。
固いボタンを全て留めたら、一度全体的に上から下へ向かって整える。またうるさいくらいの衣擦れが響いた。
最後にロッカーの扉の裏についている小さな鏡で、頭に奇妙なものを装着。ピン留めで押さえ、それがまたくい込みすぎると痛い。
我らにはゆったりとしている時間は、ない。
着替えた者から、今度は気合いを入れるかのようにロッカーを乱暴に閉め、
その部屋をぞろぞろと出て行く。
グループごとに集まり、半分目が開いていない者、今更真っ白な記録に慌てて文字を綴っている者、行きたくないとほざいている者、白い集団がうじゃうじゃいる。
しかし時間がくるとリーダーが声をかけ、小集団で歩き出す。
カチカチにノリがきいた白衣、まとめた髪に乗っている白のキャップ、ストッキングまで白くて、白い靴はまったく機能性が求められない安っぽい履き物。
我らは白い病棟へ、白い姿で、白い息を吐きながら向かうのだ。
先が見えない、白い世界へ白い鎧の集団で。
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