ゴミに出して捨ててやります

2/32
2231人が本棚に入れています
本棚に追加
/295ページ
   明日香がドアを開けるより、少し前。  どうしようかな。  日々、いろんな理由をつけては、明日香の部屋に来ていたが、と思いながら、秀人は扉の前にたたずんでいた。  すると、勝手にドアが開く。  明日香が顔を覗けた。  自分がなにも言わないでいると、明日香もまた、沈黙したまま、少し見て、閉めようとする。 「待て」 と足を突っ込むと、 「……刑事ですか」 と言われた。  それでというわけではないが、警察手帳のように、手にしていた紙袋を突きつける。 「茶碗だ」 「なんでうちに持ってくるんですか」  まったくだ、と思いながら、 「お前が自分で買いそうにないから。  それに、お前は自分からは、うちに来ないじゃないか」 と言った。  ただの此処に来る言い訳だったが、幸いなことに自分は表情には出ないから。
/295ページ

最初のコメントを投稿しよう!