動いてるんですか?

14/15
前へ
/295ページ
次へ
「ところで、珈琲代、お前が出したな」 「あ、はい。  これしきでは申し訳ないのですが。  今、かばっていただいたお礼に」 と言うと、秀人は白衣の下、ズボンのポケットを探り、札を二枚出してきた。 「俺が出す」 と言う。  いや……珈琲一杯千円って、何処の専門店ですか。  貴方、社食の珈琲代も知らないのですか、と思ったが、社員証で払えるので、金額は知らないのかもしれないと思った。 「いえ、そんなことしていただいては」 と言うと、 「なんでだ」 と秀人は言う。 「お前、俺と結婚するんだろ?  付き合っているのなら、男が出すものだと聞いたぞ」  いや、聞いたぞって……。 「あのー、結婚って」  それは確か、あの場の言い逃れだったはずだが、と思いながら訊き返すと、 「お前のことはよく知らないが、見合いだと思えば、出来ないこともないはずだ。  あれも出会ったばかりの相手とすぐに結婚するという、よくわからない行事だからな」 と言ってくる。  はい?
/295ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2251人が本棚に入れています
本棚に追加