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事の発端はまあ何とも幼稚な事で
私もちょっとむかっときてしまったのでつい、売り言葉に買い言葉をしてしまったのが原因なんだけれど
あの日はちょうど天魔戦争から五百年の節目を迎える記念式典の準備をしていたはず
ええっと、確か熾天使様からお預かりした手紙を魔界のバルバートス公へと渡しに行った日だった
うん、そう
そこでいつも通りに手続きをして門番のネズミ頭に道案内してもらっていた時よ
私の! 倒すべき! 最大の! ライバァァル!がいたのよ!
……居ただけよそれがどうしたっていうの
それにライバルも私が勝手に言ってるだけだけど
天魔戦争の時にアシュタロス大公の元で戦っていたのを見かけて、私は必死で食らいついて一騎打ちまで持ち込んだっていうのに!
力の差で負けてしまうところまできて一言
『あ、俺女子供は殺さねぇから』
これよ!?
戦争中だって言うのに何を言いだすかと思えば…っ!
しかも悪魔が!
考えただけでムカムカしてきた
こほん、話を戻すわね
で、そのバルバートス公へ手紙を渡した帰りにばったり出くわしたんだけど
なんか灰色の箱に甘い香りのするものをいっぱい持って歩いてたのよね
決闘と言いかけた口を閉じてそれ何って聞いちゃった私も私だけど
そしたらあいつ
『これ?なんか人間界に遊びに行ったらおもしろいことやっててな。バレンタイン、だっけ?好きなやつにチョコを渡すんだって』
って!
軽々しく人間界に行くのは天界では処罰の対象なのにこの悪魔はっ……!
まあそれで
『はああぁぁああ!?何あなた、遊びに行くためだけに人間界に行ったの!?
まって、好きなって……もしかしてあなた誰彼構わず人間に手を出してるわけじゃないでしょうね!?この外道が!』
『ちげーーよ!知らねぇ奴から貰ったんだよ!手作りみてぇだし捨てるわけにいかねーじゃん。
だから俺がありがたく食ってやるんだよ。あ、そういうことか。高尚な天使様には人間の食べ物なんて触れることすらないか』
『なっ……言ってくれるじゃない!私だって人間が作るものぐらい作れるし、食べれるわよ!』
みてなさい!証明してあげるから!と小悪党の捨て台詞みたいに天界に戻ってきたのがつい昨日のこと
「アルメン様、お鍋が焦げておりますよっ」
「え、なんですって……って焦げてるううう!」
「だから言ったじゃないですか!あれほど料理の最中は目を離さぬようにと!」
「だって暇だったから別の作業してもいいと思ったのよ!……ごめんなさい」
いつもの癖でチョコの着いたヘラをびしっと突きつけてしまった
突きつけた先のキューピットの顔面がチョコまみれ…あー、まあいいか
焦げて食べれるようなものじゃないし
「今綺麗にするから……はい、これでいいでしょ」
「もう。アルメン様は少しは戦いのことから頭を離してくださいよ…今ここでスクワットなんてしなくてもいいじゃないですか…」
「体は毎日使ってないと衰えるのよ!今日は朝から鍛錬も何もしていないし…焦げるなんて思わなかった。しっかり時間測ったのに不思議ね」
「でも焦げてるじゃないですか。しかも手を止めていますし。よく見たら時間もずれてるじゃないですか」
「そ、それは…まあ……失敗はつきものだし?材料はまだあるからもう一回するよ!ほら手伝って!」
「はいはーい」
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