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「ところでキューピット?あなた人間界について詳しいの?さっきから口出しばかりしてるけど」
私がせっかく汚れを落としてあげたって言うのに…どこからかタオルを取り出して拭いているし
人間界にチョコレートの材料を買いに行かせたのは私だけどさぁ
私が行くと毎回七門の門番を黙らせなくちゃいけなくなるから面倒なのよ
あれぐらい熾天使様のお使いなんです〜って言えばなんとかなる
私みたいに真面目にお勤め果たしている人しか効果ないけど
「そりゃあアルメン様、私の仕事は恋の橋渡しだとかキッカケ作りだとか…愛に関する事が多いですからね。人間界に行く機会が多いんです!少なくともアルメン様よりは!」
「たしかに私はあんまり人間界のお仕事ないけど!夜の道なんて今はどこもピカピカじゃない!!人生の道とかしか照らしてないの……時代の流れって怖い…」
神の天啓も頻度は少ない
だって私神様じゃないからせいぜい人の思考を誘導することしかできないもん
何度同じ上位天使達に戦場でしか役に立たないって言われたことか…
仕方ないじゃない!
これが私の力なんだし
生まれ持った力を妬み僻みなんてした日には私が魔に落ちちゃうわ
「でも、私はそもそも本体である神の体から分裂して、さらに分裂した下級天使なので言ってしまえば私神様なんですよ?力も無いので特に何も止められることなく行ったり来たりできるんです」
「ああ…そういえば。元の体はエロース様?それともクピード様?」
「エロース様ですよ!」
「あっそう」
色々な形にくり抜かれた型に流し込む
うぅむ、こんなのでいいのかしら…あいつが持っていたチョコレート?
中が見えるタイプはもっと綺麗だった気もするけど…
それからしばらく暇そうにしていたキューピットがどこかへ飛んで行ったかと思うと、小さな体に似合わない大きさの本をいくつも持ってきた
ええっと?
おかし作りの基本?
そして変な本も数冊
私の隣のテーブルで器用に小さな羽を動かしながらページをめくっている
「アルメン様、アルメン様。どうしてチョコなんて作ろうとしたんです?」
「急にどうしたの。さっき言ったじゃない」
「見返してやるためってやつでしたっけ?でも私、調べてきたんですよ!アルメン様のために!!」
「うわっ恩着せがましい」
そして私に一枚の紙を渡してきた
「人間界の国日本のバレンタイン…」
「そうなんですよ〜他の国とはちょっと違うみたいです。痕跡もついでにたどってきたんですけど、某悪魔の人も日本に行ってたみたいですね〜」
「えっそうだったの!?私てっきりこのヨーロッパのあたりだと思ったんだけれど…ほら似合いそうだし」
「まあまあ落ち着いてくださーい」
私にその話題を振ったのはキューピットの方じゃない!
「昔からバレンタインは好きな人に自分の気持ちを伝えるためにチョコを渡すらしいですけど、何とそのチョコには義理と本命があるらしいですよ!」
「ギリー?なにそれ誰かの名前?」
「ギリーじゃないです、義理です!二人が愛し合うそれとは違いますけど、友達だとかお世話になってるだとか…誰にでも渡せるチョコレートだそうですよ!」
え
それってあいつがつまり告白されたから箱いっぱいにチョコをもらったわけじゃなくて、単に顔の良さのせいで貰っただけ?
なにそれ!
「っぷ、あっはははは!なんだ、そんなことだったの!っはあ……あっいやそうじゃないからね!?」
「いえいえ、わかっておりますよアルメン様。さ、できたチョコレートを袋に詰めてしまいましょう!アルメン様がお好きだと思って赤い袋ご準備しましたので!」
私の前に出してきたのは半透明の鮮やかな赤の袋
所々に透明な場所があって…キューピット、あなた私の好み押さえてる!
さすが長年私のお供をしてきただけあるわ!
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