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 あきれたような笑香の声に僕はちょっとふてくされた。開き直って先を続ける。 「だから、今さらだけどって言っただろ。……僕が前、君にそう言ったのは君をおどしてた時のことだし、逆に君から告白された時は、僕は好きだって言ってなかった。ちょうどいい機会だから、今日ちゃんと伝えておこうと思ったんだよ」  本当は、順番が最後のはずだったのだが。  言いたいことを言ってしまって僕は安堵のため息をついた。すると、横からかすかなすすり泣きの音が聞こえ、僕はぎょっとして笑香を見た。 「え? え、笑香!?」  余計なことを言ってしまったのだろうかと、不安にかられながらも笑香の顔をのぞき込む。  笑香はぽろぽろ涙をこぼしながら、僕ににっこりと微笑んだ。 「うれしい。……ありがとう」  僕は胸がいっぱいになった。わずかに体を後ろにずらし、笑香の背中を抱きしめる。前よりもさらに小さく感じる、制服姿の笑香の背中。  僕は耳元でささやいた。 「一生、僕のそばにいてくれ。君さえいれば、何もいらない」  何もなかった僕を満たして、居場所を作ってくれた人。  僕は優しく、まるで壊れ物を扱うように、そっと両腕を前に回すと笑香の体を包み込んだ。      *  広げた自分の制服の上に笑香の体を寝かせると、僕はなるべく体重をかけないようにのしかかった。軽く開いた笑香の唇に、自身の唇を重ね合わせる。  初めは軽く、ついばむようにふれては離して角度を変える。つややかに散らばる髪をなで、両方の手で笑香の頭を優しく支えてキスをする。笑香はまぶたを閉じたまま、僕の愛撫を受けていた。  笑香の顎に唇をはわせ、僕はそのまま細い首筋へ愛撫の矛先を移して行った。笑香の制服の胸元にある、濃いえんじ色のスカーフが軽く自分の顎にふれる。  僕はふと、それを引き抜くかどうか迷った。今、それをやってしまったら、僕のえげつない妄想に笑香を巻き込むことになる。  顔を離した僕の様子に、笑香がそっとまぶたを開いた。  なあに? と言いたげな優しい笑香のまなざしに、僕は途方に暮れた顔をした。 「……どうやって脱がせればいいかわからない」  素直に僕が伝えると、笑香はにこっと笑って見せた。 「ちょっと待って。自分で脱ぐから」  とまどいながら僕は笑香から体を離した。  笑香はゆっくりと起き上がり、自分でスカーフを引き抜いた。まるで見てはいけないものを見てしまったような気がして、僕は思わず目線をそらした。  どうやら胸元のスナップをはずしているらしい、ぷちぷちと小さな音の後、かすかな衣擦れの気配が続く。  僕は自分の情けなさに頭を抱えそうになった。  どうしてこうなるんだろう。僕が考える想像の中ではもっと簡単なはずなのに。
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