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「ごめん……」  つまらせた声で謝る僕に、笑香は優しくささやいた。 「なんで? 私はうれしいのに。だって、史郎君は私の中で気持ちよくなってくれたんでしょう? 大丈夫だよ、史郎君。──史郎君の好きにして」  そして汗にまみれた僕の背中をゆっくりとなでる。笑香の一つ一つの言葉が僕の心に染み渡った。 「笑香……!」  僕は満たされた幸福感で胸が一杯になった。それに比例するように、放出したばかりのものがぐんっとまた勢いを増す。  刺激が伝わってしまったらしく、笑香がぎゅっと目をつぶった。僕は笑香の耳に頬をよせ、甘えるようにしてたずねた。 「もう一回、していいかな。今度はもうちょっと何とかなりそうだ」 「え? そんなに何回もできるものなの?」  単純に驚く笑香に僕は苦笑いをした。 「それは、まあ。今が多分、一番そういう時期なんだろうし。……もうちょっと大人になれば少しは落ち着くんだろうけど」  僕は入れた時と同じように、自分のものの根元に手をそえ、自身をおおうコンドームごと高ぶるものを抜き取った。 ずるっと僕の固い肉塊が粘膜から引きはがされる。その生々しい感触に笑香が再び目をつぶった。 「──痛い?」  僕が聞くと、笑香はあわてて首を振った。少しとろんとした双眸をぼんやり僕へと向けて来る。 「ちがうの……なんか、ちょっと……」  中から引き抜く時がいいのか?  僕は何となく思い当たった。そう言えば、さっき余裕のない中でも見た笑香の切なげな表情は、僕が突き込む時ではなくて引き抜く時に見せていた気がする。  そんなことを考えながら、一度自分のベッドから下りてカバンの中をかき回し、放出したものを処理するために必要な品を探し出した。  こういう物も先にまとめて出しておけば良かったんだろうか。でもそんなこと全く思いつきもしなかったし、いくらなんでも雰囲気が壊れるだろう。  まあとりあえず、反省はすべて終わってからだ。何だか間の抜けた時間だが、笑香はじっと待っていてくれた。  処理が終わると、濡れてくせの出た前髪を僕は乱暴にかき上げた。ああもう、邪魔だ。エアコンの温度を低めに設定し直して、僕は改めて笑香に向き直った。  胸に包帯を巻いただけの笑香はベッドに正座して、きょとんとした顔で僕を見ていた。乱れた髪がかわいらしい。 「ええと。もう一回するの? あれを?」  笑香に問われ、僕は再び苦笑した。 「もちろん。そうじゃないと、僕も格好がつかない」  今、これで止めてしまったら僕のものも収まらないし、あまりにも情けないこの有様に死ぬまで後悔するだろう。男としての沽券に関わる、僕の一生の問題だ。 「どこから?」  笑香に問われ、僕はベッドに上がり込みながら答えた。 「初めから、って言いたいけど。──とりあえずこっちに来て」  笑香の前に膝立ちになって、そっと笑香の腕を取る。  薄暗がりの中とはいえど、目の前に屹立した僕のものを見せつけられて、笑香が小さく息をのんだ。だが頬を赤く染めながらも、興味深そうな表情で僕の局部を眺めている。
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