間違い

2/2
前へ
/4ページ
次へ
 彼女とLINEをしていました。  彼女から返事がきたのは、もうかれこれ1時間前。今の時刻は24時13分。もう彼女はとっくに寝ている頃でしょう。しかし、僕はちっとも眠れなかったのです。久しぶりに飲んだ酒が、妙なくらいにまわってきて、頭が、疲労とは裏腹にどんどんと冴えていくのがわかりました。  でもやはり時刻は夜中だったのです。僕はふと、酒を左手に、そしてスマホを右手に持ち、文章を打ち始めました。なんだかとても気分がよかったのです。 「好きです」  それを彼女に送りました。  送る前は、なんだかとても素敵なことのように思えたのに、いざ、僕の言葉がふたりの画面に現れた瞬間、僕は、あわてふためきました。こんな夜中の、こんな時間に、こんなことを言うなんて。自分のしたことが、ひどく恐ろしく思えました。  僕はあわてて消しました。僕の思いを消しました。 「ごめん、間違えた」  僕はあわてて送りました。何も、間違ってなどいないのに。もうかれこれずっと彼女のことが好きなのに。  ベッドに横になっても、僕は眠ることができませんでした。ああ、こんな夜中にこんなことを。やはり僕は間違っているのかもしれません。  彼女とは、もう半年も会ってなくて、それまでは毎日、嫌になるほど会ってたのに。久しぶりに行った飲み会で、彼女彼女と浮わついた連中に、半ば無理矢理連絡を取らされて……。返事が来ただけでも嬉しかったのに。そこで、やめておくべきだった。  手にしたスマホにメッセージが届きました。 「そうなんですね……、大丈夫ですよ」  ああ、やっぱり、僕は間違っている。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加