36人が本棚に入れています
本棚に追加
「悟、どうかしたと?」
「なんで?」
「ふん、なんか分らんけど」
「……」
「悟、なんか隠しとうね」(隠してるね)
「……」
「何したと?」(何をしたの)
「……」
「言いーよ」(言いなさいよ)
「あのぉ…」
「うん」
「夕べぇ…」
「うん」
「二人でアレしとう時にぃ…」(してる時に)
「えっ、アレって何?」
「アレはアレたい」
「もう朝から馬鹿やないと?」(馬鹿じゃないの)
「紗弥香、お前夕べ何も感じんやったと?」
「は? 馬鹿っ!!」
ボコっ!!痛っ!!
「そうじゃなくて、天井に見えんかった?」
「は? 何?」
「昨日さ、山中さん、あれ、ほれ幽霊の」
「あーもう、つきあっとられん」
「そうか、見えんのか。紗弥香には」
「??……何も見えんかったけど」
「やっぱり、信じてもらえんのか、俺なんか」
「ああんもう悟、信じとうよ。で昨日、山中さんが天井におったってこと?」(いたの?)
「うん」
「じゃあ、止めりーよ。途中で」(止めなさいよ)
「止められっか、途中で」
「それもそうやね」
「ねっ、紗弥香も止めれんやろ?途中で」
「馬鹿っ!!変態野郎っ!!」(変態野郎)
ボコっ!!痛っ!!なんでぇ?
そうか、山中さんは俺にしか見えないみたいだな。その内、紗弥香には山中さんはいつの間にか来なくなったって言う事にしよう。山中さんがもし昨日みたいな変なタイミングで現れたとしても、俺と山中さんの二人だけの秘密って事で良かろうもん。男には男しか分らんもんがある。昨日の山中さんの幸せそうな顔みたら無碍にも出来んよな。紗弥香ごめん。相手はもう死んだ人やから。これは俺のスケベ心じゃなかぞ。死者への情というもんたい。
──言い訳はこれくらいで良かろうか。
最初のコメントを投稿しよう!