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山中さんの正体
さてさて、なんか今夜辺り山中さんが来そうな気がするんだけど。俺にもとうとう霊感てものが見についたのかしら。ヤバイね。あれだけ、不思議ちゃん系の「斉藤さん、ここ出ますよ」的発言を痛い痛いって思っていたのに。今度から紗弥香みたいに「信じとうよ」って優しく受け止める事になりそうだ。いるんだよね確かに、幽霊は。
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さあさあ、丑三つ時来ましたよー。
絶対、山中さん来る。
ほらほらほら!
ああー、ひんやりミスト来ましたー!
そして、山中さん、来ましたー!
「どうも、こんばんわ」
「こんばんわ山中さん。どうぞどうぞ、お座り下さい」
「何時もいつも途中で消えてしまって済みません」
「いえ、いえ。ずっと居られても困りますし……あっ!スミマセン」
「良いんですよ。斉藤さんらしいです。あ、じゃ失礼します」
「どうぞどうぞ」
「斉藤さんも迷惑でしょうが、どうも波長が合うとでしょうね。本当済みません」
「波長ですか」
「ええ、見えん人には見えんですよ」
「波長が合うとか合わないとか……ですか」
「そうです。ラジオのつまみを少しずつ微調整して波長合わせるって分かりますか」
「ええ、ほんのちょっと右に回しても駄目で、ほんのちょっと左に回して駄目」
「そうです。ほんのほんの、もう一回くらい、ほんの少しの微妙なとこですね」
「はあ」
「その波長が私と斉藤さんがピタッと合う時があるわけです。しかも鬼門が開く丑三つ時という短い時間の中でです」
「はあ、なる程、それで幽霊の目撃者が少ないわけですね。この状態はレア中のレアという事なんですね」
「そうです。そういう事です」
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