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「……今度っていつよ?どうせまた私が豊橋に行かなくちゃいけないんでしょう?ゆっくりなんて……会えた事ないじゃん!!」
にじむ涙で画面がぼやける。
新幹線の回数券を買って何回だろう。
忙しくて東京までは出られないと言う彼の為に、私は仕方なく豊橋に出向くのだけど……3年間で浩介に費やした費用は膨大なものになっている。
自然に私の指は健吾さんの電話番号を押していた。
『はい、笹島です』
凛とした声が携帯越しに聞こえ、少し心がホッとする。
「あの、絵里です……こんばんは。今からお時間ってありますか?」
彼が今仕事中だっただろうかという事を配慮するのすら忘れ、私はとにかくすぐに会いたいと伝えた。
すると、健吾さんも嬉しそうに私の申し出を受けてくれた。
『分かった、仕事はあと30分ぐらいで終わるから。荻窪駅の改札で待っててもらっていい?』
「はい、大丈夫です」
電話を切りながら、私の足は今降りたばかりの荻窪駅に向かって折り返していた。
浩介を忘れたい。
もうあの魅力的な瞳に騙されない。
もうあの甘いセリフに騙されない。
もう……豊橋行の回数券は買わない……。
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