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この強い思いがあったせいか、会ってすぐに健吾さんは私の顔を見て少し心配そうな顔をした。
「何かつらい事でもあった?」
「いえ、特に何も」
心と裏腹な言葉を返し、奥歯をギュッとかみしめる。
健吾さんはその場ではそれ以上何も言わず、落ち着いて食事の出来る洋風なお店に連れて行ってくれた。
簡単にいくつか料理をチョイスし、笹島さんが全てリードするようにオーダーしてくれた。
私はそれにただ頷くだけ。
冷たい白ワインが喉を通るまで、自分の口に何かを入れようという気持ちにすらならなかった。
少しだけ世間話をして、お互い姉を通して知り合えた事を不思議な縁だねという気持ちを伝えあった。
やがて、デザートについたブラックコーヒーを飲む私を見ながら健吾さんはストレートに聞いてきた。
「絵里ちゃん……何をそんなに無理してるの?」
「え?」
ブラックが苦手だなんて顔はしてなかったはずだ。
健吾さんは何を言ってるんだろう?
「絵里ちゃんにブラックコーヒーは似合わない……」
そう言って、健吾さんはスッと私の前にミルクを差し出した。
「……」
私は抵抗する事なく、ほんの少しのミルクをカップに注いだ。
湯気の立つカップの中に白いプツプツが浮かんできて、やがてそれはふわりと雲のように広がった。
それは久しく見ていなかった、私の大好きな光景だった。
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