3.悪魔との共存

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 健吾さんは私の本心を全て見抜いてる。  見透かされた心は隠しようがない……コーヒーカップを持ったまま私は黙った。  すると、彼は思いがけない事を言った。 「頑張ってる絵里ちゃんは綺麗だと思うけど、時々は息を抜かないと」  ハッと顔を上げると、そこには寂しそうに微笑む彼の顔があった。 「絵里ちゃんはずっと……ずっと、愛しい人の為に頑張って来たんでしょ?」 「……」 「好きな人を好きだと思う気持ちを否定する必要はないよ……でも、君が苦しんでるのを見るのは僕もつらいよ」  健吾さんの声があんまり優しくて。  恋愛に疲れ果てた自分の心がホロホロと崩れてゆくのが分かった。 「私……あんな悪魔、捨ててやれって思うんだけど……どうしてもできない」 「うん」 「嫌いになりたいのに」 「うん」 「大っきらいなのに!」 「……うん」  浩介の事を悪魔と呼んでボロボロ泣く私を見ながら、健吾さんはひたすら優しく相槌をうってくれた。  そして、やがて私が落ち着くのを待ってから一言……。 「また苦しくなったら僕を呼べばいいよ」  押しつけでも何でもなく。  同じ痛みを知る彼だからこその言葉だった気がする。
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