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健吾さんは私の本心を全て見抜いてる。
見透かされた心は隠しようがない……コーヒーカップを持ったまま私は黙った。
すると、彼は思いがけない事を言った。
「頑張ってる絵里ちゃんは綺麗だと思うけど、時々は息を抜かないと」
ハッと顔を上げると、そこには寂しそうに微笑む彼の顔があった。
「絵里ちゃんはずっと……ずっと、愛しい人の為に頑張って来たんでしょ?」
「……」
「好きな人を好きだと思う気持ちを否定する必要はないよ……でも、君が苦しんでるのを見るのは僕もつらいよ」
健吾さんの声があんまり優しくて。
恋愛に疲れ果てた自分の心がホロホロと崩れてゆくのが分かった。
「私……あんな悪魔、捨ててやれって思うんだけど……どうしてもできない」
「うん」
「嫌いになりたいのに」
「うん」
「大っきらいなのに!」
「……うん」
浩介の事を悪魔と呼んでボロボロ泣く私を見ながら、健吾さんはひたすら優しく相槌をうってくれた。
そして、やがて私が落ち着くのを待ってから一言……。
「また苦しくなったら僕を呼べばいいよ」
押しつけでも何でもなく。
同じ痛みを知る彼だからこその言葉だった気がする。
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