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こうして私は、浩介と付き合っているような、そうでないような変な関係を続けながらも、健吾さんとも時々会うようになった。
健吾さんの優しさに甘えているのは自覚していたけど、浩介と離れきれずにグラグラしている私には彼の存在が必要だった。
健吾さんとの付き合いはいたって普通。
夜に待ち合わせして食事を一緒にしたり、お互い休日に暇だったらランチの跡映画を見たり……買い物をしたり。
体の関係を持たないっていう一線だけはお互い固く守る意思があって。
密室で二人きりになるというシチュエーションがないという点以外は普通の恋人みたいだった。
「健吾さんとは食事の趣味も一緒だから楽だな」
浩介といると、いつもラーメンだとかホテルの中で食べるようにコンビニ弁当だったりとか、本当に味気も色気もないものだ。
だから、健吾さんが連れて行ってくれる、お洒落なフレンチレストランとか入ると本当に気持ちがいい。
「僕、毎日こんなの食べないよ?家では普通に和食だし」
「健吾さんって実家暮らしだっけ?」
「いや、一人暮らし。自炊が好きでね、病院での昼ごはんも自作の弁当だったりする」
「すごいね、お嫁さんに欲しい感じ」
「だね……女に生まれれば良かったかも」
こんな他愛のない話をして笑いあって、本当に……“ああ、普通にお付き合いをするってこういう感じだったな”って学生時代を思い出したりした。
健吾さんは姉と付き合っていた頃から優しかったし、私を本当の妹みたいに可愛がってくれて……何となく本当のお兄さんが出来たみたいでちょっと嬉しかったのを覚えている。
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