たっぷりのカフェラテをあなたと

３．悪魔との共存

「木村さん、何だか今日は集中力ないわね」

　休み明けの仕事はどうも調子が出ない。

　エステ器具の掃除をしていても、心ここにあらずで……店長からおしかりを受けてしまった。
昨日突然笹島さんに会ってしまったのも動揺の一つだけど、仕事にこんな理由は通用しない。
　お客様を部屋に迎えてからは、必死の思いで気持ちを入れ替えた。

「今日も来たわ、木村さん！」

　数か月前まで笑顔も不自然だった４０代の女性が私の担当するお客様だ。
　今ではピカピカに光る笑顔で施術室に入ってくるようになった。

「植草様、いつもありがとうございます。あら、何だか少しすっきりされたように見えますよ」
「うふふ、そうなの。測ってもらえば分かるけど……スカートのサイズがちょっとね、落ちたのよ」
「そうなんですね！やりましたね！」

　こうしてお客様が喜んでくれるのが何よりも嬉しい。
　エステティシャンは体力を使う厳しい仕事だけど、やっぱり女性を美しくする事に貢献するのは私の喜びみたいだ。

　エステに通わなくても輝けるのになぁって思った事もあったけど、正直エステは体の肉さえとればいいっていうものではない。
　心がウツ状態で、ストレスで太ってしまう人だって少なくはない。そんな人はどれだけ施術をしても、なかなか数字が減ってくれない。
　だから、私はお客様が心の毒をすっきり吐き出して、心も体も全てデトックスしていただけたらいいなぁと思って施術している。