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仕事を終え、帰る道すがら、私は携帯片手に色々悩んでいた。
(健吾さんに思い切って連絡してみようか……でも、迷惑かなぁ)
彼は私から連絡しなければ、再会したからといって連絡をくれる人ではない。
健吾さんはそういう人だ。
姉と付き合っている時から、控えめで、常に自分を後回しにする人だった。
だから、今……手にしている携帯のメールを送るかどうかで私の未来が少し変わるのだ。
「うーん、やっぱり先に浩介にメールしよう!」
仕事帰りに一度はメール交換をするのが私と浩介を繋ぐ唯一のもの。
それ以外は忙しいと言って電話で話す事もないし、彼から連絡が来る事もない。
それでも、私は1日1回交わされるメールに小さく心を躍らせる。
『こうくん、おつかれさま。まだ残業中かな?私は仕事が終わってゆっくり帰宅中』
こんなメールを送信したけれど、いくら待っても返信がない。
寂しくなって、めずらしく通話ボタンを押してしまった。
何だか今日はどうしても浩介の声が聞きたかった。
でも、当然ながら……彼は電話に出ない。
そして、10分ほどしてポロンと届いたメールには、浩介からの短い言葉が並んでいた。
『ゴメン、超忙しい!また今度ゆっくり会おうな!』
「……」
その画面を見て、急に言いようのない怒りと悲しみが込み上げてきた。
こんなにも自分の存在価値を見失うのは初めてで、いったいどうしたらいいのか分からない。
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