3.悪魔との共存

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 仕事を終え、帰る道すがら、私は携帯片手に色々悩んでいた。 (健吾さんに思い切って連絡してみようか……でも、迷惑かなぁ)  彼は私から連絡しなければ、再会したからといって連絡をくれる人ではない。  健吾さんはそういう人だ。  姉と付き合っている時から、控えめで、常に自分を後回しにする人だった。  だから、今……手にしている携帯のメールを送るかどうかで私の未来が少し変わるのだ。 「うーん、やっぱり先に浩介にメールしよう!」  仕事帰りに一度はメール交換をするのが私と浩介を繋ぐ唯一のもの。  それ以外は忙しいと言って電話で話す事もないし、彼から連絡が来る事もない。  それでも、私は1日1回交わされるメールに小さく心を躍らせる。 『こうくん、おつかれさま。まだ残業中かな?私は仕事が終わってゆっくり帰宅中』  こんなメールを送信したけれど、いくら待っても返信がない。  寂しくなって、めずらしく通話ボタンを押してしまった。  何だか今日はどうしても浩介の声が聞きたかった。  でも、当然ながら……彼は電話に出ない。  そして、10分ほどしてポロンと届いたメールには、浩介からの短い言葉が並んでいた。 『ゴメン、超忙しい!また今度ゆっくり会おうな!』 「……」  その画面を見て、急に言いようのない怒りと悲しみが込み上げてきた。  こんなにも自分の存在価値を見失うのは初めてで、いったいどうしたらいいのか分からない。
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