逆張りニューヨーカーの銀座ランチ

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 俺の名はボブ・ボブソン、ダークマターのボブ。粋でイナセなニューヨーカーだ。  隣にいるのは相棒のアルフレッド・マクドナルド、ラシュモアのレッド。  今、俺達は所属しているアメフトチームの遠征で、日本の東京に来ている。  チームメイトの大半が慣れない土地での体調コントロールのため、本国でも食べなれたハンバーガーでランチを済ませる中、俺は敢えてこの「銀座」にやってきた。  何故か? 決まってる。  日本でアメフトをやるなら、日本の気候に合わせた方が強くなれる。  そのためには、日本の料理を食べた方が良い。  そして、銀座では最高の日本食が食えるという寸法だ。  今、銀座には何とかいう化け物が出るという噂もあるが、だからこそ店も空いているというものだ。俺達は適当に目に付いた、オリエンタルな外装の店に入った。 「ヘイ店主、ここは何の店だ?」 「へい、寿司屋でごぜぇやす」  適当に入った店は、寿司の店だったらしい。  カウンターに据え付けられたガラスケースには、魚の切り身が並んでいた。  なるほどな。俺は注文を決めた。 「ハンバーガーを4つ、ポテトをLサイズで2つ、それにコーラも2つだ」  店主は一瞬目を眇めた後、「へい」と一言、ポテトを揚げ始めた。 「ボブの兄貴」 「何だレッド」 「ここは寿司屋でがしょ? 何で寿司を頼まないんでガス?」 「寿司屋だからって寿司しか頼まないのでは芸がないぜ、レッド」  曰く、寿司屋の実力は、卵焼きを食えば判るという。だが、俺達は卵なんてフライドエッグしか食ったことがないから、味の違いがわからん。  その点、ハンバーガーとポテトなら、世界一の評論家さ。  俺は間抜けなレッドに説明してやった。 「ハンバーガーとポテトを食えば、その店のレベルが判るのさ」 「へへえ! さっすが兄貴でガス!」  そこへ、ポテトの揚がる軽快なジングル。  細切りのポテトを網でサッと掬った店主は、流れるような手付きでバンズとパティ、それに幾らかの野菜を、ハンバーガーに組み立てる。  見事だ。 「へい、お待ち」  俺とレッドの前に同時に並べられたハンバーガーは、バンズが黄金に光輝いているように見えた。  いや、気のせいじゃない。 「これは、金箔か?」 「へい、左様で。見た所、お客さん型は何かスポーツをやられているご様子」 「それと金箔に何の関係があるんでガス?」 「金箔は体内電気をよく通す性質があり、電池のパワーをむだなくモーターに伝え、振動に強いのも特徴。プロスポーツ選手の走りをいっそう高めます」 「なるほどな。だが、味はどうかな?」  俺はそう言って、ポテトを摘まんだ。  ハンバーガーの味を確かめるのに、ハンバーガーを食べるのは二流だ。一流はまず、ポテトを食べることで、その店のハンバーガーの味を想像する。 「ふむ……これは、なかなか」 「うめぇでガス! うめぇでガス!」  ハンバーガーを貪るレッドを横目に、俺は一本ずつポテトを進める。  本国でもこのレベルのフライドポテトは滅多に食えない。これなら、ハンバーガーの方も期待できる。  俺は満を持して、コーラに口を付けた。 「ゴクリ……ほほう、良い材料を使っているな」 「へい、コカ・コーラ ボトラーズジャパン社から仕入れた純正品で」 「この甘味、酸味、舌に弾ける辛味……本国で飲むのと同等、いや、温度管理や器の分を含めれば、それ以上の味わいだ」 「うめぇでガス! うめぇでガス!」  コーラを飲み干し、ハンバーガー1つとポテト少しで満腹になった俺は、残りをレッドに食わせてやった。  料理が片付いたら、俺達は金を払って店を出た。 「おい、何してるんだアンタら!」  と、機嫌良く歩く俺達を呼び止める者がいた。日本の警官だ。 「今、銀座一帯は化け物が出るから通行禁止だぞ!」 「ヘイ、警官。その化け物ってのは、どっちにいるんだ?」 「あっちの方だ! 絶対に近付くなよ!」 「ありがとよ」  警官と別れた後、俺達は警官が絶対に近付くなと言った方向へ進む。  そして、誰にも会わない内に、チームの宿泊するホテルに辿り着いた。   翌日、試合会場に付いた時に聞かされた。  相手チームは昨日の夕方、宿泊施設が化け物に襲われて、全滅したという話だ。 ----------------------------------------- 参考: ・『ポケットモンスターSPECIAL』(1997/04~)  日下秀憲/真斗/山本サトシ 著、小学館 ・『GP.360 MSシャーシ ゴールドターミナル: ミニ四駆|TAMIYA SHOP ONLINE -タミヤ公式オンラインストア-』(2020/01時点)  https://tamiyashop.jp/shop/g/g15360/
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