足手纏い

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足手纏い

「…ヴァイアル家の、解放───…。」 「…んじゃァ、まずはあの家の奴らから保護すんのかァ?」 「………いや」 私は、窓から木々を見据えながら答える。 「──…二手に分かれて同時に保護する。」 「………はァ?」 目の前を見やると、彼は困惑顔で此方を見ていた。 どうやら、理解が出来なかったらしい。 「…同時に保護ォ…?エラドールに居るメイドと、ヴァイアルの奴ら…順番に保護すりゃァ良いんじゃねぇのかよォオ…?」 「…よく考えてみて。仮に、片方を保護したとして。そしたら…お父様達はどう動くと思う?」 「あー…?どーゆー意味だよォオ………?」 はぁ、とつい溜め息が漏れる。 …何千年も生きてるなら、もう少し頭が回っても良いのでは……? 「…つまり、もう片方は………保護できる状態じゃなくなる。…ギアを仲間につけるのは、ほぼ不可能になるということ…」 「……あァ、なるほどなァ。そりゃァ困るなァ…」 やっと分かってくれたのか…と、内心ホッとしていると。 ザキラはまだ、納得がいっていない様子で…私に訊いた。 「…お前、二手に分かれるなんて簡単に言うけどよォ。俺は良いとして、テメェは平気なのかよォ?すぐに捕まんじゃねぇのかァ…?」 「………それは」 「もし警備員に見つかったりしたら、お前の場合その時点でもう終わってるようなモノなんだよ。対抗する術なんて持ってねぇだろうからなァ?」 ………痛いところを突いてくる。 確かに、私一人じゃ見つかればアウト。 ………正直、リスクが大きい…。 …けど………。 「私はっ…!!もう、足手纏いには…なりたく、ない…。」 「………」 私は、俯いたまま…呟くように言った。 …顔を、上げるのが………怖かった。 バカにされるかもしれない。 「お前には無理だ」って…否定されるかもしれない。 そうやって…見捨てられるかもしれない…。 …それが、堪らなく………怖かった。 ザキラは、黙ったままで。 やがて、口を開いたかと思えば…彼は。 「足手纏いィ………?テメェそれ、本気で言ってんのかァァ…??」 「………え?」 反射的に、私は顔を上げてしまった。 ………けれど。 「お前が居なきゃ、俺は復讐なんてできやしなかったァ………頭のわりぃ俺じゃァ、どっかで詰んで終わりだ。…けどなァ?」 「………」 「………あ゙ーもう、面倒くせェな!!つまり、テメェを足手纏いだと思ったことはねェって言ってんだよ!!」 …けれど、そこには…私をバカにしたり、否定したり…見捨てたりするような人は、居なくて。 ………ただ…そこには。 「だから、二手に分かれるってのだけはナシだかんなァ!!わかったか、カーラ!!」 「…!……うん………!!」 ………そこには。 私を、受け入れてくれる存在が…ただ、居ただけだった。
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