16人が本棚に入れています
本棚に追加
足手纏い
「…ヴァイアル家の、解放───…。」
「…んじゃァ、まずはあの家の奴らから保護すんのかァ?」
「………いや」
私は、窓から木々を見据えながら答える。
「──…二手に分かれて同時に保護する。」
「………はァ?」
目の前を見やると、彼は困惑顔で此方を見ていた。
どうやら、理解が出来なかったらしい。
「…同時に保護ォ…?エラドールに居るメイドと、ヴァイアルの奴ら…順番に保護すりゃァ良いんじゃねぇのかよォオ…?」
「…よく考えてみて。仮に、片方を保護したとして。そしたら…お父様達はどう動くと思う?」
「あー…?どーゆー意味だよォオ………?」
はぁ、とつい溜め息が漏れる。
…何千年も生きてるなら、もう少し頭が回っても良いのでは……?
「…つまり、もう片方は………保護できる状態じゃなくなる。…ギアを仲間につけるのは、ほぼ不可能になるということ…」
「……あァ、なるほどなァ。そりゃァ困るなァ…」
やっと分かってくれたのか…と、内心ホッとしていると。
ザキラはまだ、納得がいっていない様子で…私に訊いた。
「…お前、二手に分かれるなんて簡単に言うけどよォ。俺は良いとして、テメェは平気なのかよォ?すぐに捕まんじゃねぇのかァ…?」
「………それは」
「もし警備員に見つかったりしたら、お前の場合その時点でもう終わってるようなモノなんだよ。対抗する術なんて持ってねぇだろうからなァ?」
………痛いところを突いてくる。
確かに、私一人じゃ見つかればアウト。
………正直、リスクが大きい…。
…けど………。
「私はっ…!!もう、足手纏いには…なりたく、ない…。」
「………」
私は、俯いたまま…呟くように言った。
…顔を、上げるのが………怖かった。
バカにされるかもしれない。
「お前には無理だ」って…否定されるかもしれない。
そうやって…見捨てられるかもしれない…。
…それが、堪らなく………怖かった。
ザキラは、黙ったままで。
やがて、口を開いたかと思えば…彼は。
「足手纏いィ………?テメェそれ、本気で言ってんのかァァ…??」
「………え?」
反射的に、私は顔を上げてしまった。
………けれど。
「お前が居なきゃ、俺は復讐なんてできやしなかったァ………頭のわりぃ俺じゃァ、どっかで詰んで終わりだ。…けどなァ?」
「………」
「………あ゙ーもう、面倒くせェな!!つまり、テメェを足手纏いだと思ったことはねェって言ってんだよ!!」
…けれど、そこには…私をバカにしたり、否定したり…見捨てたりするような人は、居なくて。
………ただ…そこには。
「だから、二手に分かれるってのだけはナシだかんなァ!!わかったか、カーラ!!」
「…!……うん………!!」
………そこには。
私を、受け入れてくれる存在が…ただ、居ただけだった。
最初のコメントを投稿しよう!