16人が本棚に入れています
本棚に追加
エラドール邸
──…上層区の中心に建てられた、堂々とした屋敷。
警備員が嫌というほど視界に入る。
共に身を隠している彼は、少し楽しんでいるように見えた。
……現在、私とザキラはエラドール邸へやって来ていた。
~ ~ ~ ~
「………でも、それじゃあ…どうやって保護するの?」
疑問に思った私は、椅子に腰掛けている彼に訊いた。
すると、彼は口角を上げて、
「…俺が何年、生きてきたと思ってんだァ?メイドを保護して、気づかれる前にヴァイアルの奴らも保護するなんざ、俺にとっちゃ容易なんだよォ」
と、余裕の表情を浮かべていた。
…確かにザキラが走れば、メイドとヴァイアル両方の保護が間に合うかもしれないが……
「………私は…ザキラみたいに、速く走れない。…また、足手まと──」
「──お前もしつけェなァ!足手纏いなんかじゃねぇって何度言やァ分かるんだよ!!別に、俺がテメェを抱えていきゃァいいだろォが!」
いつものように、怒鳴られる。
声がデカくて耳が痛いが、決して悪い気分にはならなかった。
…ザキラは、私を必要としてくれている。
ならば、私も答えなくてはならない。
「………そうだね…ありがとう」
「あァ、そうだァア!二度と足手纏いなんか言うんじゃねぇぞォ!!」
「………うん」
~ ~ ~ ~
「──んで、どうやって侵入すんだよ」
「…実は、バレずに中へ入れる、抜け道があるの。………こっちへ」
私は、抜け道のある場所を指差す。
それは、小さい頃によく使っていた秘密の通路だった。
私達は、そこから………エラドール邸へ侵入し、メイドを…探し始めるのだった──…。
最初のコメントを投稿しよう!