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ギアという男
「──…旦那様や奥様から、ザキラ様…貴方のことは聞いております。不老不死の…玩具、だと」
「あ…?玩具だァ………?テメェふざけ──」
「アルラ。その言い方は……」
あと数歩で殴る勢いだったので、私はザキラの言葉を遮って、アルラへ呼び掛ける。
…けれど、私も…あんな言い方は、してほしくなかった。
「も、申し訳ありません…。お嬢様、ザキラ様」
「………チッ。そんで、ギアが何だってんだよォ?」
ザキラは、不機嫌そうな顔をしながら、アルラに問い質す。
アルラはやっと、「はい、実は…」と、ギアについて語り始めた。
「ギア様…いいえ、ギアード様は…──ザキラ様と同じ、〝不老不死〟でございます」
「──はァァ!?」
「ザキラと………同じ…?」
…そうだ、確かに…あの身体能力に、刀…。
「ザキラよりも………長く、生きてる…?」
「──…はい。ギアード様は……何百万年も前にお生まれになったと聞きました」
「………はァア…??何百万年ンン…??」
ザキラは、怪訝そうな顔をしていた。…それもそうだろう。
自分と同じ不老不死が存在していたこと自体、驚愕の出来事だ。
そして、その不老不死が何百万年も生きているなんて…そんなの、誰だって驚く。
…無論、私も開いた口が塞がらない状態だった。
「………そして、旦那様や奥様は…ザキラ様やお嬢様に対して、酷く残酷な目に遇わせました」
「………」
思わず、〝あの光景〟が甦る。
お父様に暴力…そして、無意味な拷問を受けた、あの───。
「…ですが、ギアード様は………そのような目には遇われておりません」
「……え?」
「はァ…?」
思わず、声が漏れた。
ザキラは、物凄いしかめっ面をしている。
「いいえ、正確に言えば………何をしても、ギアード様には…全て、無意味だったのです」
「………全て、無意味ィ…?」
「………お父様とお母様は、それがつまらないから…戦力として使ってる…。人質をとって……。」
そう言うと、アルラは「その通りでございます」と、こちらを見て言った。
少し間を開けてからアルラは…──そして、と言葉を続ける。
「──…ギアード様は、ザキラ様………。貴方様を連れ戻すための、戦力だと…旦那様は言っておられました」
「………は?」
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