無意味

1/1
前へ
/45ページ
次へ

無意味

「ど、どうして………!ギア!人質は、もう…」 「…旦那様に………逆らウなら…おマ、エらヲ………コロす…」 「く、来んじゃねェエ………!!」 …ギアの様子が………おかしい。 人質を保護したのに、お父様側に付いている。 …それだけじゃない…。ギアは、お父様に洗脳されている………?? 「…お父様。ギアに、何を飲ませたの……?」 「そんなの………お前ごときが知ることでもないだろ」 …自分の父親とは思えないほど、冷たい視線を向けてくる。 けれど、私に悲しみ…などという感情が芽生えることは無かった。 そこにあったのは…憎しみ。ただ、それだけ。 目の前の人間が…ただただ、憎たらしかった。 「……お父様」 「話しかけるな、鬱陶(うっとう)しい!!塵の分際で!!」 「…私が、塵なら…貴方は塵以下だということ、ちゃんと理解してる?」 「何を言う!?あまりにも舐めた態度をとれば、〝拷問部屋〟へ連れていくぞ!!」 目の前の人間への怒りで…頭が、どうにかなってしまいそうだった。 「別に…そんな脅し、もう怖くないよ。それに、もうすぐここに…警察が駆け付ける。舐めた態度をとってるのはどっちだろう?」 ただただ、目の前の人間を…殺し──…。 「………警察?そんなチンケな組織で…本当に俺を捕らえられると思っているのか?」 「………どういうこと?」 「まぁ、来たらわかるんじゃないのか?お前がどれだけ…無意味なことをしているか、ということを」 目の前の男は、余裕そうな表情を浮かべていた。 …警察を呼んだ、というのは……嘘だ。 その場しのぎに過ぎない。…けれど。 一つ、新たな情報が手に入った。 ───…エラドール家に、警察は無意味。 理由は予想できる。金で繋がっているのだろう。 …ところで、ザキラは何処に行ったのだろう。 さっきから、叫び声が聞こえない。 …と、思っていた矢先──。 「──来んじゃねェっつってんだろォ!!」 「…コロス………ころス…こロ、ス………。」 「ザ、ザキラ………!!」 ザキラは──…今にも、ギアに……… ───…首を切られそうになっていた。
/45ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加