バケモノ系 ショートショート 『 影 (かげ) 』

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 週末の午後……  気分が悪くなったタクヤは散歩に出掛けた。  そして彼が森に入ろうとすると、フッと変な女が現れた。 「私は魔女のシテーネよ。 あなたの気分が悪い原因は、その影のセイだから取ってあげるわ」  タクヤの足から伸びていた影を、あっさり取ってしまった。 「ほら、これで気分が治ったでしょう。じゃねー」  シテーネはタクヤの影を、持っていた袋に入れると、フッと消えてしまった。  タクヤは、影が無くなった足元を怪訝(けげん)そうに見たが、確かに気分は軽くなった気がした。  ところが今度は、どうも歩きにくいな……と見てみると、タクヤの足が地面から離れていたのだ。 「どうやら影は、人と地面をつなぐ役目をしていたようだ」  困ったタクヤは、インターネットで色々と検索してみた。  しかし、影を元に戻せる者など、そうそういる訳がなかった。 「不思議な事は、その道の専門家に()くしかないだろう……」  と、たまたまテレビに出演していた、超常現象研究家のマットKに相談することにした。  すると、(めず)らしそうにタクヤを見たマットKは、研究所に招くと、倉庫から古そうな資料を出してきて、 「インドの田舎(いなか)に、そういう変な研究をしてる者がいたはずだ。 ワモナという男だが…… とりあえず行って、相談してみなさい」  タクヤは、(わら)にもすがる思いで貯金を下ろすと、インドへ向かった。  インドに着いたタクヤは、さっそくワモナ宅に向かった。  そのワモナという人物は、そうとうな老人だったが、タクヤから事情を聞くと、 「それはお困りじゃろう……。 こんな事が出来るのは、世界でワシだけじゃろう……が…… しかしな……いま適当な影が無いんじゃ……」 「このさい、影ならどんなのでもいいですよ」 「なら、なんとかしよう……」  そして実験室にタクヤを入れると、ものの数分で、ある影を彼の足につけた。  タクヤは、足に影が付いて元の状態に戻ったと大喜びし、代金を払うと帰って行った。  が、その後でワモナはつぶやいた。 「とりあえず、処分予定のバケモノの影を付けたが…… 大丈夫じゃろうか……? あのまま日本へ直行すれば、いいだろうが……」  日本に帰る前にタクヤは、アメリカに寄って遊ぶことにした。  ニューヨークを歩いていると、興奮したのかタクヤの影が暴れだした。  するとタクヤ自身の体も変化しながら暴れだし、周りの人々を襲った。  ついにFBIが出動する騒ぎとなり、バケモノに変身したタクヤを路地に追い詰めた捜査員たちは、 「もう、どうにもならん!」  と一斉に発砲した。  その瞬間、時間が止まった。  例の魔女のシテーネの仕業(しわざ)だった。  シテーネは、その光景を見ながら、 「どうやら私に責任があるようだね……。 仕方ないから、彼に付いてるバケモノの影を取って、元の彼自身の影を付けてやろう……。 そして、ちょっとしたプレゼントを……」  時間が動きだした。  FBI捜査員たちが発砲した弾丸は、誰もいなくなった壁に命中した。  それを見て、捜査員たちは呆然とし、 「アイツ……消えた……」 「あのモンスターは……?」 「まったく訳が分からん……」  その頃タクヤは、日本の自宅で目を覚まし、呆然としていた。  ――終――
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