<前編>

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 それは胡桃も同じなのだろう。だからサボりに協力してくれるし、こうやって大好きな“おまじない”の話でも盛り上がれるのである。今見せてもらったサイトも彼女の紹介だった。というか、紹介してきたのが彼女じゃなければ、胡散臭いと一蹴して終わっていたところだっただろう。  キラキラしたタイトルがケバい上、厨ニ臭いポエムが並んでいるのがあまりにもドン引く印象だ。管理人の“自称・ プロ占い師”というのもどこまで信憑性があるのかどうか。 「信じらんないのも無理ないけどねー。あたしも、最初見た時マジ何これーって思ったし。漫研の先輩の紹介じゃなかったら、実行しようと思わなかったもん」  胡桃の言葉を聞きつつ、ホームページをスクロールしていく。掲載されているおまじないの種類は多岐に渡るようだった。金運がアップするおまじない、幸運をアップさせるおまじない――そんな可愛らしくてささやかなものから“嫌いな奴を失脚させるおまじない”なんて怖いタイトルのものまである。  失脚させるってなんだよ、と思ったがさすがにそのページを開くのは憚られた。代わりにクリックしたのは、胡桃が自分で試したという“恋愛成就のおまじない”だ。これもこれで胡散臭いが、少なくとも人の不幸を願うものでないだけマシだろう。  確かに“のろい”と“おまじない”は何故だか同じく“呪い”と書くものではあるけれど。それでもやっぱり、呼び方が違うのだから違うものだと思っていいはずである。 「胡桃も胡桃の先輩も、コレで彼氏ゲットしたっていうじゃん?にわかには信じられないんだけど」  カチカチとマウスを鳴らしながら、私は半目になってサイトを見つめる。本物だというのなら、もう少し信憑性がありそうな書き方のひとつでもしれくれらばいいものを、なんて考えながら。  書かれているやり方は非常にシンプルだ。好きな相手の名前と自分の名前を一枚の紙に書いて、相手の名前から自分の名前の方に矢印をずいーっとぴっばるのである。そしてその紙を、このサイトに書かれている魔方陣の上に重ねて呪文を唱えた後、ベッドか布団の下に入れて一晩寝る。ただそれだけ。血が必要だとか四つ角に埋めるとか、そういう手間さえ必要ない。高価なクリスタルか何かの購入を要求されるかと思いきやそれさえないのだから拍子抜けである。 「やり方が……なんか超適当なかんじ……」 「もー、疑り深いな(あざみ)は!マジだって言ってるでしょー?このあたしが薊にウソついたことが今まで一度でもありましたかー?」 「一度どころかいっぱいあったと思いまーす!」 「えー?そうだっけぇ?」
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