<後編>

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<後編>

「いえーいおめでとう薊ー!」 「ありがとう胡桃!ほんと、胡桃があのおまじない勧めてくれたおかげだよマジ感謝ー!」  現在、カラオケボックス内。ドリンクバーのジュースをビール代わりに派手にぶつけて乾杯した。お酒を飲むくらいの勢いでぐびっと一気飲みを敢行する私である。いやはや、この店には年単位で胡桃と一緒に入り浸っているが、ここの安くて薄いジュースがここまで美味しいと思える日が来ようとは夢にも思わなかった。  今日。朝、車田に手を振った直後――意を決したように彼に呼び止められ、そしてそのまま告白された。教室で、かなりのクラスメートが見ている前で、である。一体何でそんな勇気を急に振り絞った!?と男子達は驚いていた。そして私が涙目になってOKを出せば、今度は女子がひっくり返った。一体どういう心境の変化!?と仲の良いみんなには取り囲まれてしまったほどである。  まあ、無理もないだろう。私が車田のことを恋愛的な意味で好んでいる、なんてことは胡桃以外の誰も知らなかったはずである。同時に、私が本来かなり面食いのタイプで、容姿だけ言えば車田はまるで好みではないはずだということも。顔立ちもそうだが、私は以前から周囲には“痩せてすらっとしたモデル体型が好き”なんてことも口にしていたのである。車田は太っているわけではないが、筋肉モリモリのわかりやすいマッチョなので一般的なモデル体型には程遠い。一体いつの間に、と周りが思うのも無理からぬことである。私とて、自分でもこの気持ちに驚いているほどなのだ。 『いいでしょ、本当は……私だってずっと前から好きだったんだから!』  そう言って、みんなの前で車田の腕にすがり付いてみせた。車田といえば――硬派な彼は、女の子にこのように抱きつかれた経験など今まで一度もなかっただろう。真っ赤になって、今にも倒れそうな有様だった。自分から告白したはずなのに、なんて初々しい反応なのか。そんなところも可愛い、食べちゃいたい――なんて品のないことを考えたのはここだけの話である。 「まさか、夜におまじないして、翌日にはもう効果があるとか。ほんと予想外だったわ」  メロンソーダと一緒に持ってきたアイスをちびちびと食べながら、私は告げた。
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