ブラッディバースデー

2/7
208人が本棚に入れています
本棚に追加
/133ページ
 ブラッディバースデー。  家族全員がそろい愛する子供の誕生日を祝う。温かく幸せに満ちたそのひと時を一転、血と悲鳴と死で飾る凶悪連続殺人事件の名だ。  誕生日を祝う幸せな家庭ばかりを狙い家族全員を殺して楽しんでいる。劣悪な殺人犯は、まだ捕まっていない。  半年で27件。なのに未だに手掛かりもほとんど見つかっていないうえに、警察の上層部は諦め半分で捜査班を縮小。  昨晩もやられたっていうのに。壁には色とりどりの色紙で作ったチェーンや花飾り。床には鳴らして散ったクラッカーの残骸、主役の子供が被っていたのであろうとんがり帽子。  そして、テーブルの上にある豪華なご馳走と、“誕生日おめでとう”と書かれた大きなホールケーキ。  ケーキを囲むようにおばあさんとお母さん、主役の小さな男の子が椅子に座り、床にはお父さんが血溜まりの中に横たわっていて。皆、首を大きく斬られ死んでいた。  白かったケーキもご馳走も、床も壁も天井も大量の血に染まる。部屋に入った途端にむせるような血の匂いと光景に、吐いた。  この凶悪な連続殺人事件の担当になってもう何度も見てきた光景。何度も間に合わなかった、誰1人として助けられなかった。  いつも駆けつけた時には犯人は立ち去ったあと。犯人逮捕につながる手掛かりはなく、チャンスは誕生日を祝う家庭を見張るということだけ。  とはいえ一般家庭の、子供の誕生日を見張らせてもらうなんてプライバシーの侵害すぎる。  誕生日を迎えても連続事件に恐怖し、祝うことなく過ごそうとする親がほとんどだしな。だが幼い子供には、自分が幸せの絶頂に殺されるかもしれないという恐怖が理解できない。
/133ページ

最初のコメントを投稿しよう!