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「心得た。だがしかし、1日は1日であるぞ」
天王寺は1日を強調して言葉にする。
「なあ、1日って日が暮れるまでだよな」
何となく嫌な予感がして、俺はそんな確認をしていた。こいつが強調することは、俺の考えを大きく裏切ってる可能性が高いからだ。
でもって、今回もそれは当てはまり。
「1日とは24時間であるぞ」
「なんで24時間なんだよ!」
「1日は24時間と決められておるではないか」
それはそうだけど、初めてのデートで24時間も一緒にいるカップルなんてどこにいるんだ。……俺は天王寺に一般的意見を言いたかったが、返される言葉が分かってしまうだけに、声にすることは躊躇。
だって、「ここにいるではないか」と返ってくるってわかるだろう。
「……へ、変なことしたらすぐ帰るからな」
俺は精一杯の忠告を添えた。
「変なこととは何のことだ」
「変なことは変なことだっ」
みなまで言うな。俺は一人で恥ずかしい妄想をしてしまって、顔が真っ赤になっていた。
そんな俺に天王寺は「姫の望むままに」と、王子様みたいな台詞を言った。
「分かればいいって」
「さすれば、ここへ誓いを」
「は? ……ここって?」
天王寺は1日デートをここへ誓えと、自分の手を差し出してきた。
差し出された手に誓いをと求められた俺は、どうしていいのか分からずに、変な顔をしてしまう。だって、手を差し伸ばされたところで一体どこへなんの誓いをすればいいんだと、普通は悩むだろう。
俺の知ってる約束って、指切り程度しか知らないんだから。
「姫、私の手を取るのだ」
困惑している俺に天王寺が指示を出すから、言われるまま手を取る。
「手の甲へ口づけを……」
「……な、……何言ってんのお前!」
ぶわっと駆け抜けた羞恥に、俺は全身鳥肌で真っ赤に染まる。これは罰ゲームなのか、恥ずかしめなのか、どちらにせよ、そんな木っ端恥ずかしいことできるわけない。
取り乱した俺は、天王寺の手を離して床を見つめた。
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