第一話:雪女

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 カランコロン。  木製の呼び鈴が立てる子気味の良い音に合わせて、私はとびきりの笑顔を見せる。 「いらっしゃいませー」 「邪魔するぞ、笑香(えみか)」  ボーイッシュなアルトボイスで、真っ赤なベストのおかっぱ少女が入ってきた。 「なーんだ、長谷川(はせがわ)かぁ」  私はいつも通り、彼女を名字で呼んだ。  下の名前で呼ばれるのは嫌いらしい。なんでも女の子らしすぎて似合わないとか。  花子(はなこ)って名前、かわいいと思うんだけどな。 「そうがっかりするな。せっかく客がきたというのに」 「だってさ。毎日同じお客さんばかりだと……店の経営的にね」  長谷川以外誰もいない店内をながめて、ついた深いため息が白く凍りついた。  ――別に店の空調が壊れているわけじゃない。私、小泉(こいずみ)笑香は雪女なのだ。 「そうは言っても、地獄の三丁目も過疎化だからな」 「それはわかってるけどさー、それでも売上が」 「あ、ダージリンとスコーンのセットを頼む」  私の愚痴が長くなりそうだと思ったのか、長谷川は話の途中でわざと注文をはさんだ。
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