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「いってて…っ」 強かに尻を打ち悶絶する。 痛みに涙の滲む目を開いて見渡し息を呑む。 「な……、か、隠し通路…?」 石畳の回廊が奥へ奥へと続いている。 見上げれば明かり取りの穴らしきものが点々と見え、月明かりが差し込んでいる。差し込んで光は壁に跳ね返ってより輝きを増しているように見える。 壁の石が光を反射させきらきらと星のように光っているからだ。 ただの石ではないのだろうか。 「こんなものがあったのか…」 この回廊が何処まで続いているのか知らないが、これを使えば外に出ることも可能だ。 壁づたいによろよろと進みながら、アレックスはだんだんこの状況に腹が立ってきた。 膝まづいて四つん這いになるわ、転がり落ちて全身痛いわ、全身衣服も含めて満身創痍だ。良い歳した大の大人が何をしているのかとも思う。 そもそも、この仕事だって初めからキナ臭いと思っていたのだ。なんだ子どもの監視って。己は確かに流行り病にこそ掛かりはしないだろうが、その代わりにゴリゴリ削られいくのは良心と精神力だ。 それに加えて今や身体を張っているこの状況。 「くっそー…こんなの給金に見合わん。ぜったい追加で請求してやるからな…」 痛む腰を抑え、アレックスが苦々しく呟いた。 その時、 「良く出来ているでしょ?」 不意にその声はした。 音がしそうな程勢いよく振り返る。 「秘密の抜け道だよ。有事の時に此処を通って逃げるんだって」 「ヘーゼル…さま…」 振り返った先、そこにはヘーゼルが居た。 彼は車椅子生活を余儀無くされていたはずの二本の脚でしっかりと立ち、アレックスを見ていた。 呆然とするアレックスに向け小首を傾げ、ヘーゼルがにこりと笑った。 「今晩は、アレックス先生」 【第一章 END】
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