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なんてクソガキだ…! 自室に戻る廊下を歩きながら、アレックスは憤懣やるかたない思いでいっぱいになっていた。 使用人たちを起こすわけにもいかないので、静かに歩かなければならないのだが、少し気を抜けば荒々しい足音を立てそうになってしまう。 虫も殺せないような顔をしてあの子ども、大の大人を脅しにかかってきたぞ。なんてやつだ。 明日、良い返事を待ってるね、と変わらず可愛らしい笑顔で告げてきたのは最後通告ときた。 理由はわからないが、あの子どもはどうしてもアレックスをこの屋敷から追い出したいらしい。 脅しの材料としてヘーゼルが寄越してきた調査書の中身は本当のことだった。調べた者は仕事が出来るのだろう。コストナー男爵は念入りに自身の醜聞を隠したはずだが、良く調べられていた。 自室の前に辿り着いた。 ドアノブに腕を伸ばして気が付く。 月が雲間から出て来たのだろう、窓から差し込む月明かりを弾いてネクタイに挿したタイピン、そこにあしらわれた石がきらめいている。 「………」 じっとそれを見つめ、ひとつ息を吐く。 ノブを回して部屋に入った時、不意にその声はした。
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