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「それで? この屋敷の隠し通路のことを知っているんだ。君は執事長の孫娘さんか? シンプソン家の親戚筋の子どもじゃないだろう。訪問の知らせは聞いていないからな」 自分で言っていてアレックスは気付く。 執事長の孫娘はこの地方に巣食う流行り病”影無し“に罹って眠り続けていると聞いている。 ならば他の古参の使用人の子どもかと思うが、すぐに思い直す。他のめぼしい使用人の子どもも孫も、確か皆一様に影無しとなってしまっているはずだ。 子どもも罹ってしまう流行り病だ。何が原因かも不明な今は、親は敏感になって子どもが夜に外を歩き回ることなど許さないだろう。 身なりを見てもみすぼらしさは微塵もなく、浮浪者の子どもにも見えない。 なら、この少女は何者だ? 少女も教える気はさらさらないようで「さあ…?」と小首を傾げるばかりだ。 「わかった。これだけ教えてくれないか。君はヘーゼル坊っちゃんを知っているんだな」 「ええ、知っているわ。とてもよくね」 「まさか本当に坊っちゃんの親戚じゃないよな?」 「どうかしら」 「はぁ…その人を食った態度、坊っちゃんによく似ているが…」
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