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2月も半ばのある日のこと。 玉山順次(たまやまじゅんじ)は、緊張の面持ちで、茂原市内にあるレストランの窓際の席に座っている。 1年交際した佐藤敬子(さとうけいこ)に、プロポーズするためだ。 僅かに震える右手で水が入ったグラスを掴む。 そのときだった。 「ごめんね。待たせてしまって」 敬子がニコリと笑う。 「いや、俺も今来たところなんだ」 順次がやや早口になった。緊張しているときのクセだった。 「で、話したいことって何かな?」 ニコニコしながら聞く敬子を見て、順次の緊張は極限にまで高まる。
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