黒王子に不可能はないらしい

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「名前は竹内ほとり、歳は今年で25歳。  カミルリゾート総務部人事課勤務、うん、いや、もう辞めるんだったっけ?  実家は信州の山奥にあるひなびた旅館。  中肉中背、顔のレベルは中の中のちょっと上、性格は…?  それは、これからのお楽しみというところかな」  その訳の分からない男は、やっと動き出した車の流れに喜んで私にウィンクをした。  ちょっと待って…  ほとり、落ち着いて考えてみて…  何で、今日初めて会うこの人が、私の情報をそれも近々の最新情報を知ってるの?  私は自分の胸に手を当てて、大きく深呼吸をした。  動き始めた車はあっという間に首都高速を抜け、横浜へ向けて颯爽に走っている。 「あ、あの、すみませんけど、あなた様の自己紹介もお願いしていいですか? 私の自己紹介は、もう、終わったようなので…」  サラサラの髪をワックスで無造作に動かしている髪型が、横から見たら妙にセクシー過ぎる。  私はこの男の魅力にひれ伏しそうになる自分に、バカと渇を入れた。
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