黒王子に不可能はないらしい

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黒王子に不可能はないらしい

 湖のお宿まんだら荘。  私の生まれ育った家、祖父の代から続くひなびた温泉旅館。  四方を山で囲まれた小さな湖のほとりに建つこの旅館は、コアな常連のお客様によって支えられていた。  でも、それも、もう、限界にきている。  古びた旅館の厨房とお風呂をリフォームし、道路を挟んだ湖側の小さな土地を買いそこにボート小屋を造った。  私の実家まんだら荘は、その時に出来た一千万円以上の借金がいよいよ返せない状況に陥っている。 「明日、部長に事情を話して、退職できるか相談してみるから。  すぐには無理だと思うけど、一か月後か二か月後にはそっちに帰れると思う。上手くいけばの話だけど…」  とりあえず、お母さんにはそう言ってはみたけれど…  でも、私が帰ったところで、旅館の売り上げが急激に上がるとも思えない。  せっかく入れたカミルリゾートを辞めるのは、本当はすごく悔しい。  でも、一人っ子の私は、困っている両親を無視できないのも事実。  あ~、なんでまんだら荘なんかに生まれてしまったんだろう…
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