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私はその迫力ある目力に、一瞬で目を逸らしてしまった。
…怖いんですけど、もしかして闇の世界の人?
「今のこの状況は…
さっき、俺、言わなかったっけ?
横浜に行くのなら、連れて行ってやるって」
車は渋滞に捕まり、その男は腕を伸ばして大きくため息をつく。そして、ゆっくりと、私の方へ顔を向けた。
バチバチと目が合った瞬間、私はまた目を逸らしてしまった。
今度は違う意味で…
その男はビックリするほどの綺麗な顔で、それも私の好みの薄い顔で、口角がキュッと上がった癒し系イケメンだった。
闇の世界の人間なんかじゃない。身につけている洋服のように、最高級のどこかの王子様に違いない。
この男から溢れ出るオーラが、私にそう訴えている。というか、そんな気がする。
「な、何で、そうなるんですか…?」
ちょっとだけおしとやかな声でそう尋ねた。
渋滞のため、まだ車は動かない。そんな暇な時間を利用して、その男は私の全てを舐めるように見ている。薄っぺらな私の事を一分もかからずに分かったみたいな、憎たらしい顔をして。
その表情は王子様なんかじゃなかった。
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