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その男は首を傾げて、悩まし気に私を見た。
「知りたい?
でも、俺的には教えたくないし、竹内的にも知らない方がいいと思う」
竹内的?
名字で呼ばれるなんて小学生以来なんですけど…
「じゃ、知ったら私はどうなりますか?」
私がそう質問した途端、この謎の男は私の前にあるダッシュボードの箱を指さして、何かを取れとジェスチャーで訴えた。
私はあたふたとそこを開けてみてその男が言う通りに何かを必死に探していると、それだよと威張った顔で私に顎で指図する。
そこにはレイバンの高級サングラスが無造作に置いてあった。
私がそれを渡すと、その男はサンキューと微笑んでレイバンのサングラスをさりげなくかける。
普通の平凡な男の身のこなし方ではない。
一流の男が一流の物を普通に使う、気負う事なくあくまでも自然体で、そして優雅に。
私が不本意ながら見惚れていると、その男はさっきの質問を今聞いたみたいな白々しい演技をして私を見た。
「ごめん、さっきの質問の答え。
俺の素性を知ったら?
そりゃ、逃げ出したくなるだろ」
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