黒王子に不可能はないらしい

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 私は何も言わず、前に広がる高速道路の景色を凝視した。  逃げ出したくなる?  やはり意味が分からない。  その前に、この男は一体何者なの??  車が高速道路を出ても、私はずっと黙っていた。  このゴージャスなイケメンが悪い人間なのかは分からないけれど、でも、現実的に私を拉致している事には変わりない。  私は、あまり関わらない事に決めた。横浜駅のどこかで車から降ろしてもらえればそれでいい。  出来る事なら、それっきりで別れたい。  綺麗な横顔を見ていたい気もするけれど、でも、この男に刺激を与えないように息を潜めて時間が過ぎるのをひたすら待った。 「竹内、何、黙ってる」  竹内って…  せめて、さんぐらい付けてほしいんですけど。 「だって…  だって、自分の自己紹介もしない人と、話したくないです。  今日は、そちらが私を連れ回してるくせに、その威張ってる態度もちょっと…」  ほとり、黙って!  私の口は喋り出したら止まらなくなる。  どんな人かも分からないのに、怒らせてナイフで刺されたりしたらどうするの?
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