黒王子に不可能はないらしい

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 私の心臓は口の中から飛び出すんじゃないかと思うほど、バクバク爆発の寸前だった。  隣に座る男の人がイケメン過ぎて、心臓の高鳴りの種類がよく分からない。私は何も言わず、隣に座る男の横顔をチラチラと見ていた。  もし、私がこの男に拉致されたとするならば、これは立派な犯罪だ。でも、平凡非凡な私を拉致する事に、何の得があるのだろう…  車の種類には全く詳しくないけれど、でも、今私が乘っているこの車は超高級車だという事は分かる。  隣の男が身に付けているスーツも靴も、真っ白いシャツでさえ超高級品だという事も。  私はバッグの中にあるスマホを握りしめた。何かあったらすぐに110番できるように。  でも、その前に、この人は一体何者なんだろう… 「あ、あの… すみません…  今のこの状況を詳しく説明してもらえませんか…?  それで私が納得できなければ、どこかで降ろしてほしいんですけど…  それができなければ、警察に電話します…」  私は勇気を振り絞って、恐る恐るそう聞いてみた。  それまでだんまり黙っていたその男は、目を細めて私を睨んだ。
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