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「こっちも気になるけど、まずは楓ちゃんの願いを叶えてあげたい」
鈴音がはっきりと断言すると、正義と志貴が力強く笑った。
「それじゃ、明日にでも万叶神様のところへ行こう」
「え!? 志貴センパイ、大学やバイトは大丈夫ですか?」
「うん、少しぐらい大丈夫。僕も、この子の願いを一刻も早く叶えてあげたいから」
「……ありがとうございます! 志貴センパイ!!」
鈴音の笑顔に、志貴も笑みで応える。
正義はそんな二人の頭にもう一度手を置き、ワシャワシャと頭を撫でた。
「よし! じゃ、二人とも、頼んだぞ!」
「はい!」
元気よく答える志貴だが、鈴音は小さく唇を尖らせる。
「おじいちゃん、なんか司令官になったようなつもりでいるでしょ」
「ふはははははっ! 上官の命令は絶対じゃっ! 行け、鈴音!」
そう言いながら、正義は部屋を出て行く。しかし、ふすまを閉める間際、正義はこそっと小声で囁いた。
「ちっすまではええが、それ以上はここではいかんぞ」
「おじいちゃんっ!!」
「ふわはははははっ!!」
高笑いを残し、スタスタと速足で去る祖父の後ろ姿を見て、鈴音はガクリと肩を落とした。
「……ったく、逃げ足が速いったら。おじいちゃん、私より長生きしそう」
まぁそれはそれで、ありがたいことなのだが。鈴音はそう思い直し、志貴に向かって小さく肩を竦める。志貴も同じように肩を竦め、ニッコリと優しい笑みを向けた。
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