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鈴音と志貴が拝殿の前を通ろうとした時、カランカランと鈴の鳴る音が聞こえた。ふと目を遣ると、小さな女の子が熱心に手を合わせている。
「誰だろう……。親と一緒なのかな?」
鈴音は周りを見渡すが、他に人がいる気配がない。小さいといっても、小学校にはあがっているだろう。だから、一人で神社に来ていてもおかしくはない。しかし、珍しい。しかも、鈴音たちの気配にも気付かないほどに、一生懸命に何かを祈っている。
やがて、その女の子はやっと気が済んだのか、顔を上げて踵を返す。その時、女の子と鈴音たちの目が合った。
「えっと……こんにちは」
「……」
女の子は何も言わず立ち竦んでいる。怖がらせてしまったのだろうか。
鈴音はニッコリと微笑み、ゆっくりと女の子に近づいて、その場にしゃがんだ。
「お姉ちゃんね、この神社の巫女なの。怖くないよ」
「……鳥さんっ!!」
「へ?」
「この鳥さん、可愛い! かっこいい! ね、触っていい? 噛まない?」
どうやら、志貴に目を奪われていたようだ。鈴音は笑って頷いた。
「うん、噛まないよ。触って……いいですよね?」
鈴音が尋ねると、志貴はクイと首を縦に振る。まさか言葉を発するわけにはいかない。
「わー、鳥さん、お姉ちゃんの言ってることがわかるの? すごいね、かしこいね!」
女の子は嬉しそうにはしゃぎ、志貴の背を何度も撫でる。小さい子なら乱暴にしそうなところだが、女の子ということもあり、その手は優しい。それに、触っていいかを最初に聞いてくるところもすごい。しっかりしている子だ。
「鳥さん、可愛い。気持ちいいのかな、じっとしてる」
気持ちいいのかと言われ、志貴はきゅっと目を瞑った。それが気持ちよさそうに見え、女の子は益々嬉しそうに笑う。志貴もノリがいい。
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