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「お姉ちゃん、この鳥さん、名前は?」
「え……」
絶句してしまう。
名前、名前、なまえぇぇ~~~~!?
鈴音は慌てて考えを巡らせる。
志貴の名前を出していいのか、それとも違う名前を考えた方がいいのか、もうそのまま「鴨さん」にしようかなど、目を白黒させながら必死に考えていると、正義の声が聞こえた。
「おぉ! 楓ちゃんじゃないか!」
「ぐーじさん!」
「え!?」
鈴音は女の子をマジマジと見つめる。志貴も鈴音の腕の中から首を伸ばしていた。
「どうしたんじゃ? お前さん一人か?」
「うん! お母さんが帰ってきますようにってお願いしたの! 神様、いるんだよね? 神様は楓のお願い、聞いてくれるよね?」
楓の問いに、正義は目尻を下げながらうんうん、と頷く。
「楓ちゃんが毎日楽しく元気に過ごしとったら、お母さんはきっと帰ってくるぞ」
「うん! 楓、幸子おばあちゃんの言うこと、ちゃんと聞いてるもん。学校で勉強も頑張ってるもん!」
「そうかそうか、偉いのぅ」
正義がよしよしと何度も楓の頭を撫でる。楓はニコニコしながらそれを喜んでいた。
「まさか、あの子が楓ちゃんだとは」
「ビックリしたね」
楓には聞こえないよう、志貴が答える。
「それにしても志貴センパイ、鴨の演技、様になってましたよ」
「……まぁ、鴨だし」
「それもそうですね」
などと話していると、正義がこちらを向いて、思い出したように言った。
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