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「鳥さん、お願い。楓のお母さんが早く帰ってきてくれるよう、神様にお願いして!」
「楓ちゃん……」
いじらしい楓に、胸がぎゅっと掴まれたように苦しくなる。
「楓ちゃんは、お母さんが好きか?」
正義が尋ねると、楓はブンブンと首を縦に振る。
「うん、大好き! お母さん、すっごく優しいんだ。いつも笑って、ぎゅってしてくれて、ご飯も美味しいんだよ! 楓、お母さんが大好き。おばあちゃんも大好きだけど、おばあちゃんもいないから……お母さんに早く帰ってきてほしい!」
楓の言葉に、三人は驚愕した。
おばあちゃんもいない!?
「楓ちゃん、おばあちゃんはどこへ行ったんじゃ?」
楓のおばあちゃん、つまりは栄子のことだ。今、楓の親代わりは栄子のはずだったのではないのか。
楓はしゅんと項垂れ、小さな声で言った。
「おばあちゃん、入院してるの。だから楓、今はおばあちゃんの妹の、幸子おばあちゃんのところにいるの」
「なんじゃと!? 栄子さんは病気なのか?」
正義の声に驚いたようで、楓はビクッと身体を震わせる。
「おじいちゃん、声大きい! ごめんね、楓ちゃん、ビックリしたよね。大丈夫だよ。ほ、ほら、志貴センパイ!」
「シキセンパイ?」
しまった、つい口が滑ってしまった。
今度は鈴音がしゅんと項垂れていると、志貴はもぞもぞと動き、楓に向かって首を伸ばす。そして、楓の頭の上で、嘴を何度も左右に動かした。
おそらく志貴としては、楓の頭を撫でているつもりなのだろう。見た目からすると、少し無理があるが。
それでも、その姿は何ともいえず可愛らしくて、鈴音は落ち込むのも忘れ、悶え叫びそうになった。
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