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その町は、山を切り開いて作られた新興住宅地だった。一昔前までは移住してくる者も多く、町には活気があった。
しかし、交通の便がよくなく、今では最盛期の三分の二ほどの人口となり、若者も随分と減ってしまった。
町が少しずつ寂れていくと同時に、山の手にある神社も益々廃れていくばかりだ。
大昔からある由緒正しい神社で、立派な石鳥居が美しく聳え立っている。にもかかわらず、拝殿は木造のため、ところどころに傷みが見え、社務所もあるが、こちらに至ってはボロボロといっても差し支えない。
昨今は宮司のいない神社も数多く存在するが、ここには宮司もいるし、巫女もいる。社務所もオンボロとはいえ、中は事務所としての役割を果たすくらいには、きちんと整えられていた。
この小さな町の寂れた神社は、「万叶神社」という。
ご神体は、神の住む池といわれる「万叶池」。池の周りには注連縄が張られ、神域となっている。
本来、池には水がある。しかし、万叶池の水は枯れていた。そこには土があるだけだ。長い年月のいつからか、池の水は枯れていったのだという。
「なんでこれが見えないのかなぁ……」
万叶神社の巫女で、宮司の孫である、叶鈴音はひとりごちる。
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