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「じゃあさ、一旦家に戻ってもいいかな?」
「え? 何か用事があるんですか?」
鈴音が不思議そうな顔をしている。失敗することなど、考えていないようだ。
志貴は笑いながら首を横に振る。
「違うよ。一応、着替えとか取りに帰った方がいいかなと思って」
「……あっ!」
失敗の可能性に、やっと鈴音も気付いたようだ。
「えっ、あ、でも! センパイ……本当に飛び込んでくれるんですか……?」
散々やってくれと言っておきながら、今度は真逆のことを言う鈴音がおかしくてたまらない。こういうところが憎めないところだったと、志貴は鈴音についてまた一つ思い出す。
「鈴音ちゃん、変わってないなぁ」
「へ?」
「高校の頃もさ、無茶なことを言っておきながら、いざ皆がやろうってなった時に「いいの?」っておずおず聞いてきたりさ。今もそう」
「……そ、そうですよね」
猪突猛進で、思ったことをすぐに口に出し突っ走るのだが、途中でハッと我に返る。途中で我に返るなら、最初から言わなければいいのだが、どうにも抑えることができない。
鈴音が顔を俯けると、志貴は再び鈴音の頭をポンポンと撫で、立ち上がる。
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