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「とりあえず、自転車を回収して一旦家に帰るよ。配達が終わったのを本部に連絡しなきゃいけないし、その後でまた来るから」
「センパイ……」
志貴は正義に小さく会釈し、その場を後にした。
鈴音は、慌てて外まで志貴を見送りに出て、姿が見えなくなるまでその場に立ち尽くす。
「……なかなかええ男じゃの」
正義の声に、小さく肩を竦めた。
「もう……。でも、そうだよ。志貴センパイは、前からずっとだよ。全然変わってない」
「まぁ、ワシには負けるがなぁ」
正義は笑いながら家の中へ戻っていく。鈴音はその後を追いながら、ベッと小さく舌を出した。
「最初から勝負にならないよーだ」
そして、拳をグッと握りしめ、気合を入れる。
「とりあえず、浮き輪を膨らませておかなきゃ! そして、長い棒も用意して……」
志貴に万が一のことがあった時のために、色々準備をしておかねば。
鈴音は「どこにあったかなぁ」とブツブツ呟きながら、納戸へと足を運ぶのだった。
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