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「それにしても、いつもずぶ濡れ状態になるんじゃ、巫女装束も大変です……。結構重いんですよね」
あの日を思い出し、鈴音が溜息をつきながら言った。
元々動きやすくはないし、あれで水を吸うとよけいに動きづらいだろう。
「巫女の正装じゃないとダメなのかな? 万叶神様に聞いてみる?」
「どうやって? また会いに行かないといけないですよね?」
「聞きに行くだけなら、僕だけサッと行ってくるよ」
まるで友だちの家に行ってくるというような志貴の口ぶりに、鈴音は肩を震わせた。
「そんなにしょっちゅう来られても困りませんかね、万叶神様」
「さぁ……。そういうの、気にしない感じに見えるけど」
「どんな風に見えてるんですか!」
笑いながら、鈴音は部屋に広げられた用紙を眺める。今日一日ですごい数が集まった。
「すごいね。まさか、昨日の今日でこんなに反応があるとは思わなかった」
「私もビックリしました。ネットの力ってやっぱりすごい……」
鈴音が初めて万叶神の住む祠へ行った日、戻った早々に正義が言った。
『鈴音! すぐに着替えてこい! そして志貴はもう一度神使の姿になるんじゃ!』
鈴音は抗議するが、正義がそのくらいで折れるはずもなく、鈴音は急いで濡れた身体や髪を乾かし、身支度を整える。志貴が家までおぶってくれたこともあり、今は何とか動けるようになっている。それでも、身体は疲れ切ってヘロヘロだ。
鈴音が覚束ない足取りで戻ってくると、志貴はすでに鴨の姿になっていた。
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