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『志貴センパイ、すみません……。あ、センパイも濡れてたんじゃ!?』
ずぶ濡れの鈴音をおぶったのだ。当然志貴の服は濡れたはずだ。
『うん。だから、すぐにこの姿になったんだ。もしかしたら、元に戻ったら濡れてないかも』
『……便利』
『鈴音、志貴を抱っこせい』
『え?』
ふと見ると、正義がカメラを持って構えている。それを見て、正義の意図が理解できた。
『願届人の復活をアピールするの?』
『当たり前じゃっ! 巫女が神使を抱いとる写真を載せて、願い事を受け付けることを公開するぞ!』
『……まぁ、まずは知ってもらわなきゃしょうがないもんね。志貴センパイ、いいですか?』
『僕、必要かな?』
願届人が神使の姿をしていることは、一般の人は知らない。なので、願届人の復活だけなら鈴音一人で問題ないのだ。
『何を言うとる! 神使が一緒にいた方がインパクトがあるし、何より、可愛い! 可愛い写真は拡散されるぞっ!』
SNSを使いこなす老人。なかなかわかっているようだ。
鈴音は、もう一度志貴に頭を下げる。
『センパイ、お願いします』
すると志貴は、ぴょこっと首を上下させる。頷いたつもりなのだろうが、その仕草が何とも言えず可愛らしくて、鈴音の胸を打つ。
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