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『ぐっ……。志貴センパイ、それはわざとですか!?』
『え? 何が?』
無自覚らしい。鈴音はたまらず、志貴を腕に抱え、羽に顔を埋めた。
『これ、鈴音! それではお前の顔が見えんぞ!』
『ふぁい』
鈴音は羽から顔を上げ、志貴の姿も綺麗に見えるよう、体勢を整える。
『おぉ、ええ写真が撮れそうじゃっ!』
『被写体がいいんだから、当然! でも、後でちゃんと見せてよ? あと、多少は盛るからねっ』
正義は辺りをあちこちと動き回り、何度もシャッターを押す。そして、やっと納得のいく写真を撮り終え、自室へ駆けていった。
しかし、すぐに戻って来ると、願い事を届ける際にどれだけのお金を取るか、そしてどうやって願い事を回収するのかという相談にくる。そこで、おみくじと一緒に渡すという志貴の案が採用され、正義は再び自室に戻ったのだった。
『ありがとうございました』
『ううん、何となく思いついただけだし』
『何となくでも、すごいです! ところで、本当に服、乾いてますね』
志貴の予想どおり、濡れていた志貴の服が、鴨から人に戻った際にはもう乾いていた。というか、濡れた形跡がない。
『うん。なかなか便利だよね。でも、神使って神聖なものだし、そんなにひょいひょい簡単になっちゃダメだよね』
さすが志貴、真面目である。でも、こういう志貴だからこそ、万叶神も資格を与えたような気がする。
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