願届人の初仕事

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 書いたのは子どもだからなのか、必死で純粋な気持ちでこれを書いたように思える。  しかし他の願い事だって、ある意味、必死で純粋なのだ。  すぐに大金を必要としているなら、宝くじに当たってほしいと思うだろうし、将来の生活の安定のため、難関校に合格し、一流企業に就職したいとも思うだろう。  大人だからダメ、子供だからいい、というのは違う。 「あ~~~難しいっ!」 「願い事の選定って難しいよね……。どれも切羽詰まったものかもしれないし。だったら……」 「だったら?」  鈴音は助けを求めるように志貴を見つめる。志貴はフッと柔らかい笑みを浮かべ、鈴音の頭を軽く撫でた。 「鈴音ちゃんの心に響いた願い事を選ぶしかないんじゃない?」 「心に響く願い事……」  鈴音は広げられた用紙を眺める。そして、コクンと頷いた。 「そうですね。とりあえず全部に目を通して、そういう願いがあるか、確認します」 「うん」  悩んだ時、迷った時には、いつも志貴から的確なアドバイスを貰っているかもしれない。いつの間にか、願届人としてだけでなく、志貴を頼りにしている気がした。自分で思っているより、ずっと。  それは、志貴にとって迷惑だろうか。  鈴音は、チラリと志貴を見遣る。志貴も鈴音と一緒になって、願い事の用紙を丹念に確認していた。その表情は真剣で、鈴音の心臓が小さな音を立てる。 「うわ……」  志貴や正義には聞こえないほどの微かな声で、鈴音は呟く。  ──志貴センパイ、かっこいい。  高校の頃にどうして誰も気付かなかったのか。  今となってはそれが不思議でならない、鈴音はしみじみとそう思った。
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